コンプリートなマルタ服装ガイド

島国マルタは、豊かな歴史と地中海の影響を受けた文化によって、独自の伝統衣装を育んできました。マルタの衣装は、アラブ、シチリア、ヨーロッパの要素が融合したスタイルであり、かつては宗教行事や祭り、日常生活で着用されていました。現在では、伝統衣装は主にフェスティバルや民族舞踊などの文化イベントで見られ、マルタの誇るべき遺産として大切に守られています。
マルタの男性服
男性用ファルデッタ
今日ではあまり知られていない男性用のファルデッタは、かつて冬季に着用されていた重厚なウール製のマントです。女性のファルデッタが頭を覆うヴェールとしての役割を持っていたのに対し、男性用は実用性を重視しており、風の強いマルタの海辺でも身体を温めるために使われました。通常は黒か濃い茶色で、肩に掛けたり身体に巻きつけたりして着用されていました。農民や漁師たちにとっては、寒さから身を守るための必需品でした。
クリゼット
クリゼットは、マルタの伝統的な半ズボンで、粗いウールや綿素材から作られていました。膝丈で、腰の部分をボタンまたは紐で締めるスタイルで、厚手の靴下と革靴と組み合わせて着用されていました。耐久性が高く、農作業や漁業などの重労働にも適していたため、実用服として重宝されました。現在では、クリゼットは伝統衣装の一部として、文化行事で見られるようになりました。
カッパ·マルティア
カッパ・マルティアは、スペインや北アフリカの影響を受けた、教会や儀式で着用されたフォーマルなマントです。濃色のウール製で、広い襟や装飾的なボタンが特徴でした。防寒性がありつつ、格式高い印象を与えるため、裕福な階層の男性はより装飾的なものを選びました。このマントは、地位と敬意を示す象徴でもありました。
ミルツァ
ミルツァは、丸みのある平らなトップと短いつばを持つ、伝統的な男性用帽子です。ウールやフェルト素材で作られ、農村の労働者や農民によって日常的に使用されていました。実用性を重視したシンプルなデザインで、日差しや小雨から頭部を守る役割を果たしました。今日では主にフォークロアイベントで見られます。
カッパ·タ·ハッド(日曜ジャケット)
カッパ・タ・ハッド、通称「日曜ジャケット」は、日曜日の教会や社交場で着用されるフォーマルな上着です。リネンや上質なウール素材で作られ、日常着よりもタイトなシルエットが特徴でした。刺繍やコントラストステッチなどの装飾が施されることもあり、着用者の敬意と場の格式を示していました。銀製のボタンを使うこともありました。
マルタの女性服
ゴネッラ
ゴネッラは、最も有名なマルタの伝統的女性衣装で、頭上にアーチを描くように硬く仕立てられたフード付きマントです。コットン、シルク、またはウールで作られ、フルレングスのドレスの上に着用されていました。この衣装は、外出や宗教行事の際に女性の慎み深さを表す役割を果たしました。また、日差しや風から身を守るためにも使われていました。
コルセットとスカート
伝統的なマルタの女性たちは、装飾的なコルセットとロングスカートの組み合わせを身につけていました。コルセットは前で締めるタイプで、身体にフィットし、鮮やかな赤や青、緑などの色合いが人気でした。スカートはプリーツやギャザーでボリュームを出し、エレガンスと動きやすさを兼ね備えていました。この組み合わせは、日常にも祝祭にもふさわしい衣装とされていました。
ファルダル
ファルダルは、コルセットとスカートの上に着用される伝統的なエプロンで、装飾性と実用性を兼ね備えたアイテムです。リネンやコットン製で、刺繍やレースがあしらわれることも多く、女性の家事能力や労働への誇りを示す象徴とされていました。特に農村地域では、色鮮やかで祝祭向けのファルダルが好まれました。
カッパ·タ·シェムシュ(日除けマント)
カッパ・タ・シェムシュは、暑い季節に使用される軽やかなマントで、太陽から身を守るための衣装です。重たいファルデッタとは異なり、モスリンやレースなどの軽量素材で作られ、繊細な刺繍が施されていることもあります。肩や背中にふわりと掛けるスタイルで、暑さの中でも涼しさと品位を保てるように工夫されていました。
ジョック·ウ·チンタ(帯)
ジョック・ウ・チンタは、女性の腰に巻く装飾的な帯で、シルエットを引き締めると同時に衣装に彩りを加える役割がありました。シルクやコットンで織られたこの帯は、鮮やかな色合いが特徴で、リボン結びやノットで留められました。個性や家族のシンボルを表すために、イニシャルや模様が刺繍されることもありました。
現代マルタのファッション
現代のマルタでは、地中海の気候に合った洗練されたカジュアルスタイルが主流です。バレッタやスリーマなどの都市部では、軽量素材とゆったりとしたシルエット、そしてヨーロッパ的なエレガンスが融合したファッションが見られます。国際ブランドと並んで、地元のデザイナーたちは伝統的なモチーフやマルタレースを取り入れることもあり、文化と現代性を両立させています。現在では、伝統衣装は主にフェスティバルや歴史的な再現イベントで披露され、マルタの文化遺産として称えられています。