Timothy Mark

南極点にあるアムンゼン·スコット基地のシェフ、ティモシー·マーク氏へのインタビューをお届けします。世界最南端の地での料理は、極限の孤立環境と向き合いながら行われます。ティモシー氏は、南極点でのチームの食事、創造性、そして生存のバランスをどのように取っているのかを語ってくれました。
The Fashiongton Post: ティモシーさん、地球上で最も過酷で隔絶された場所のひとつで料理をするのはどのような感じですか?
Timothy Mark: 基本的な作業は通常の厨房と似ていますが、南極点ならではの課題があります。冬の間、私たちは完全に孤立し、8か月間は飛行機も来ません。気温が-50℉以下になると、貨物機の油圧システムが機能しなくなるのです。そのため、2年分の食料を冷凍保存し、少しでも新鮮な食材を確保するために水耕栽培の温室を活用しています。私たちは43人のチームに対し、週6日、1日3回の食事を提供しています。シェフの労働時間は週54時間にもなります。基地での生活は24時間体制なので、やがて仲間は家族のように感じられます。
F.P.: 他の極地基地と比べて、アムンゼン・スコット基地での料理はどう違いますか?
T.M.: 最大の違いは「新鮮な食材がない」ことです。沿岸部にある基地は定期的な物資補給を受けられますが、私たちは8か月間完全に孤立しています。冬が始まる前に、ニュージーランドから約5000ポンドの野菜と卵が届きます。できるだけ長く保存しますが、最終的には使い切ってしまいます。温室で少量の野菜を育てることができ、それを使って週に数回サラダを提供しています。これがとても貴重なんです。
F.P.: この職に就くまでの採用プロセスについて教えてください。
T.M.: 南極でのシェフの採用は、米国南極プログラムの下請け会社であるGana-A’Yooが担当しています。オンライン応募から始まり、面接を経て採用が決まります。出発の約10か月前には手続きを開始し、健康診断やセキュリティチェックを受ける必要があります。健康診断は非常に厳しく、宇宙飛行士並みと言われています。なぜなら、ここでは8か月間病院に行くことができないからです。
F.P.: 食材が不足したり、傷んでしまった場合、どのように対処しますか?最も創造的な料理を教えてください。
T.M.: 即興で料理を作ることは日常茶飯事です! 幸い、私たちには豊富な食材、スパイス、ソースのストックがあります。工夫次第でどんな料理でも作れます。特に「本日のスープ」を作るのが楽しかったですね。冷蔵庫を開けて、面白そうな材料を組み合わせて新しいスープを考案しました。ロブスター·ビスクや、タイ風エビのココナッツカレー·スープも作りましたよ。
F.P.: これまでに使用した最も意外な食材は何ですか?
T.M.: 驚かれるかもしれませんが、私たちは高級食材を扱うこともあります。フィレミニョン、カニ、ロブスター、生ハムなど、さまざまな食材があります。また、スパイスも豊富で、アジア、中東、カリブ、アフリカのスパイスまで揃っています。南極基地とは思えない品揃えです!
F.P.: チーム編成はどのようになっていますか?
T.M.: 私がいたときは4人の料理チームがあり、レストランのような運営をしていました。エグゼクティブシェフ、ベーカー(パン職人)、そして2人の調理担当がいました。
F.P.: 長い冬の間、食事を通じてチームの士気をどのように維持していますか?
T.M.: 料理は「自分が作りたいもの」ではなく、「みんなが食べたいもの」を優先することが大切です。特に、温かくてボリュームのある料理が好まれます。肉料理やキャセロール、家庭的な料理は人気があります。冬の間に3回の特別ディナーを用意しますが、日常の食事はシンプルで親しみやすいものにしています。
F.P.: これまでに南極で作った中で最も難易度の高い料理は?
T.M.: 冬の中間点で特別ディナーを用意しました。メニューは以下の通りです。
ハリッサ、ゴートチーズ、いちじく、ローストひよこ豆を詰めたラムロール、バジルヨーグルトソース添え
グリュイエールチーズのバスケットに盛り付けたミックスサラダ、キャラメルナッツ、ゴルゴンゾーラ、ストロベリーバルサミコドレッシング
フライパンで焼いた鴨の胸肉、ハニーコーンブレッド、チミチュリ、しいたけソース、ロースト芽キャベツ、スイートポテトボール
F.P.: チームの間で最も人気のある料理は何ですか?
T.M.: マカロニ&チーズです! トッピングを自由に選べる「マック&チーズバー」を作りました。懐かしい味で、炭水化物が心地よさとエネルギーを与えてくれます。また、シェフの一人が東テキサス出身で、彼の作るクレオール料理も大人気でした。
F.P.: これまでで最もユニークなリクエストは?
T.M.: ロシア出身のクルーがいて、彼のためにボルシチを作りました。
F.P.: 南極で特別な料理技術を開発しましたか?
T.M.: ここは標高9300フィートですが、気圧の関係で時には11,700フィートに感じることもあります。そのため、パンやお菓子の焼き加減が大きく変わります。私はエグゼクティブシェフとベーカーから学びながら、この環境に適応する方法を身につけました。独学でシェフになった私にとって、まるで大学院で学んでいるような経験でした。
F.P.: もし誰かが基地を訪れるなら、おすすめの料理は?
T.M.: 冬の間、隔週の金曜日は「ピザデー」です。生地から手作りし、チーム全員でピザを作ります。本当に美味しいですよ!
F.P.: 最後に、ファッショントン・ポスト の読者にメッセージをお願いします。
T.M.: 新しい経験に対して常にオープンでいること。人生は、コンフォートゾーンの外で始まります!