渡邉貴義 (Watanabe Takayoshi)

4月 25, 2024

和食料理家、渡邉貴義さんへのインタビュー。料理家一家の3代目で、特に魚介類の料理に重点を置き、寿司をメインディッシュとしています。

Takayoshi Watanabe interview

The Fashiongton Post: 最初に寿司を専門にしようとしたきっかけは何ですか?また、寿司づくりの技術は他の日本料理とどう違いますか?

Watanabe Takayoshi: 幼少期から両親が寿司屋を営んでいて家業を継ぐことに何の疑いも持たず寿司業界に入りました。寿司は私にとって常に身近にあるものであると同時に私の生活になくてはならない存在でもあったのです。寿司はお客様の目の前で料理を仕上げます。お客様の目の前で最後の仕上げをするということは念入りな仕込み、下準備が必要でありそこにも高い技術力が必要です。お客様は職人の動きや食材の扱い方を常に見ています、そこには一切の妥協も許さない独特の空間が広がります。料理人としての最高の技術を求められるのはもちろんのこと、ソムリエールやメートルドテール同様に食材の産地や特徴をわかりやすくお客様に伝えることも重要な仕事です。

F.P.: あなたたが従う伝統的な日本料理芸術の背後にある特定の哲学や原則はありますか?またその理由はなんですか?

W.T.: 私は私の寿司を日本の伝統芸能だと思っております。私の寿司をお客様に提供する際のポーズは歌舞伎にインスピレーションを得ていますし、日本舞踊の様なしなやかな動きを意識しています。

清潔感、しなやかな身のこなし、古くから日本に伝わる伝統、それらを私の寿司に落とし込み、show upする事で体験型のエンターテインメントとしてブラッシュアップすることに成功いたしました。

Takayoshi Watanabe interview

F.P.: 日本料理について人々が抱いている誤解はなんですか?

W.T.: 日本料理に限った事ではありませんがSNSが急速に普及した昨今、情報の取得は容易になりました。レシピなどを元に料理を再現することは難しくないかもしれません。ですが私は寿司職人ですので寿司職人の観点からすると食材の吟味から始まり下処理、塩のあてかた、食材事の調理方法、出汁の取り方等ここでは伝えきれない程の工程が各食材事に存在し、季節事にも変化します、同じレシピで料理を作ったとしても1・5・10年とそれぞれ異なる料理経験を持つシェフで味の変化が出てくると私は思います。

F.P.: 寿司づくりにおいて伝統はどのような役割を果たしていますか?何世紀にもわたる技術を尊重しながらどのように革新しますか?

W.T.: 私が思うに寿司というものは常に伝統とともにあると思っております。例えば米に酢、塩、砂糖を混ぜたシャリを使用したりワサビを使ったり魚を酢漬けにしたりする技法は食材を安全にお客様に提供するために古くからある伝統的技法です。ここ数十年の間に発泡スチロールが開発されて氷を使用することで食材の鮮度を極力保ち、スムーズな運送ルートが確立されつつあることは技術を尊重しつつ革新しているといえるでしょう。

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F.P.: アマチュアが寿司を作ろうとするときよくある勘違いはどのようなものがありますか?それらはどのように回避できますか?

W.T.: 私は寿司職人としてお客様からお金と時間をいただく事を仕事としています。常に最高の食材を仕入れ細かなプロセスを経てお客様に楽しんでいただくということに誇りをもっております。従ってプロフェッショナルとアマチュアでは同じ感覚でのアドバイスは難しいのではないかと思いますが、しいて言うなら現在はインターネットでたくさんの情報を取得できますしYOUTUBEやInstagramなども普及しています。皆さんの教科書は常に身近にあるのです。それともう一つ、どうかあなたの寿司を楽しんで下さい!

F.P.: 旬の食材は日本料理においてどのような役割をはたしていますか?また、料理の品質をどのように確保していますか?

W.T.: 季節の移り変わりがはっきりとしています。春は桜や山菜の季節で生命の息吹を感じることができます。夏は緑が一層濃くなり涼しげな料理を、秋は食欲の秋とも呼ばれたくさんの食材が出てきます。冬は寒さが厳しいですがその分魚に脂がのってきます。このように日本の料理は季節と密接に関係し日本人は食を通して季節を感じることが大好きです。私が最も重要視するのは食材の鮮度と品質です。私のレストランがある北九州は四方を海と山に囲まれており常に高鮮度で高品質の食材が手に入ります。また仕入れ先との信頼関係も重要です。常に食材を仕入れ続けることによって私の元には常に最高の食材があり続けるのです。

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F.P.: 新しい料理やメニューを開発するときの創造的なプロセスについて説明していただけますか?

W.T.: 私は人生において学んだことが料理に反映されると思っております。若いころの修行時代や修行の末に習得した技術などで自分の料理が形成されていくのです。また他のレストランに訪れた際は料理を通して料理人の方に触れたり訪れた土地の郷土料理などを食べることで自分の料理に取り入れたりします。最近では多くの国からオファーをいただき沢山の国に訪れました。世界中の料理を通して人や文化に触れることで私の寿司をよりshow upできたと思います。

F.P.:1つのピースまたはロール内で寿司ネタの風味と触感のバランスをとることにについてあなたの哲学を共有できますか?

W.T.: 寿司は手の上で米、ワサビ、ネタ、醤油、トッピングを組み合わせて作り上げます。それらは「層」となりお客様が食べて初めて料理が完成します。中でもシャリ(米)は寿司の中で最も重要であり産地や炊き方に常に気を配っております。米、ワサビ、醤油、トッピングは変わることのない普遍的なものであり魚(ネタ)の部分が季節ごとの移り変わりがあるものであると私は考えております。それらをお客様と相対した瞬間に目の前で手で合わせて作り上げているのです。

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F.P.: 日常的に使用するナイフブランドの中で、一番好きなものはなんですか?

W.T.: TERUKNIVESという私のナイフブランドです。昔は安い包丁を長年使用していましたが、寿司をshow up することで道具にも注目いたしました。しかしその当時私のイメージする包丁がなかなか見つからず。大阪の有名な刀鍛冶さんと共同開発してTERUKNIVESが誕生しました。TERUKNIVEを使ったポージングは今では私のシグネチャーとなっており
SNSで拡散されています。日本の武士が持つ刀のような切れ味の鋭い包丁を使用することで体験型のエンターテインメントとしてよりブラッシュアップされたと思っております。

F.P.: シェフを目指す人が習得すべき、日本料理特有の重要な道具やテクニックはなんですか?

W.T.: 日本料理に限らずその国の歴史や文化を料理を通して学んでください。日本料理は先に述べたように季節の移り変わりが料理に反映されることが特徴であり時代の移りかわりによって変化してきました。調理技術に関しては日々の練習で習得できると思いますが歴史や文化を学ぶことは 意識が大切です。そのことを忘れないでください。

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F.P.: 並外れた寿司体験と単なる美味しい寿司体験の違いは何だと思いますか?またそれを達成するために自分自身の実績でどのように努力していますか?

W.T.: 私はTERUZUSHIを味覚だけでなく視覚、嗅覚、聴覚、触覚の五感全てで楽しんでいただけるようなレストランを作りました。私のレストランは九州地方の北部の北九州という土地にあります。東京からは約1000km離れておりますが今では世界中から寿司を食べにくるというよりは私に会いにお客様がいらっしゃいます。東京や大阪とは違いアクセスが難しい場所にありますがその 道中の移動や到着までのわくわく感を楽しんでいただければと思います。

F.P.: 料理においてうま味の概念にどのように取り組んでいますか?またそれを高めるためによく使用する食材は何ですか?

W.T.: 私のレストランがある北九州は先に述べたとおり海と山が近くにあり食材が豊富にあります。なかでも海産物はとても豊かで貝類の餌となる海藻が豊富に育ちます。それを食べて育った貝類は大振りでうま味も強くここでしか味わえない逸品です。私のおかれた境遇に関して言うと生まれ育った土地の食材を使用することが うま味の概念に取り組むことでありうま味を高めることにつながります。

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F.P.: 若いシェフや料理やファッションにインスピレーションを与えたファッショントン・ポストの読者へのアドバイスはありますか?

W.T.: 何事も「やり続ける先にしか成功はない。」と思います。自身の夢や為すべきことを達成する過程で何度も挫折や壁に直面することもあるでしょう。そんな時は大切な家族や友人とリラックスした時を過ごし美味しいご飯をたべ十分な睡眠をとり再挑戦してください。「近道は無い。1つ1つ刻め。それが一番の近道。」DOZO!

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